読みどころ
遺言書を作成しないことで生じるリスクやその対策を具体的なエピソードとともに解説した記事です。相続を「安心」で「円満」なものにするためのポイントがわかりやすくまとまっています。家族や大切な人に安心を届けるため、ぜひご一読ください
全ての方
遺言書が必要なときとは?(その2)―リスクを知って備えよう―
はじめに
記事をご覧いただきありがとうございます。
今回の記事は、前回に引き続き「遺言書」についてです。遺言書の作成は、「いつかやればいい」と後回しにされがちですが、作成しないことで家族に思わぬ負担をかけるリスクが潜んでいます。今回は、遺言書を作成しない場合に起こりうる問題とその対策について、具体的なエピソードを交えながら説明します。
遺言書を作成しない場合のリスク
遺言書を作成しない場合、相続は法律で定められた「法定相続分」に基づきながら、相続人どうしの話し合いで進められます。しかし、これが必ずしも故人の希望を反映するとは限りません。また、相続人どうしの話し合いが長引けば、家族間の争いやストレスが生じる可能性が高まります。特に、誰がどの財産を受け継ぐかについて意見が対立すると、感情的な溝が深まったり、これまでの感情が爆発する危険性もあります。さらに、協議の長期化や専門家への相談によって、余計な時間や費用がかかることも避けられません。このような事態をいくつかのエピソードを紹介しながら説明します。
Wさんのケースでは、同居するお父様が急逝されました。遺産には自宅が含まれており、Wさんはそのままに自宅に住みたいと希望していますが、Wさんの弟と妹は遺産を現金で受け取りたいと主張します。現金(預金)もありますが、弟と妹それぞれの法定相続分に見合う金額ではありません。ご兄弟での話し合いが平行線をたどる中、家族の間に険悪なムードが漂い、ついには裁判(調停)に発展してしまいました。
もし、Wさんのお父様が「自宅は長男に相続させる」と遺言書に明記していれば、この争いは防げたかもしれません。また、現金をもらいたいというWさんの弟と妹さんも故人の意思に触れることでより柔軟な対応が可能だったかもしれません。遺言書があることで、相続人全員が故人の意思を尊重しやすくなり、感情的な対立を避ける手助けとなりえます。
遺産分割について相続人全員の合意が得られない場合、裁判手続きに進んで解決を図ることになります。その際の基準として働くのが「法定相続分」であって、故人の希望が反映されるものではないということです。
Tさんのケースでは、生前に面倒を看続けてくれたTさんに財産のすべてを相続させたいと思っていたお母様が遺言書を作成しないまま亡くなりました。お母さんがそのことをいつも口にしていたことをTさんは知っていますが、他の姉妹は知りません。いざ遺産分割の話し合いとなったとき、他の姉妹から法定相続分どおりでの分割を請求され、結果的にお母様の意思が尊重されることはありませんでした。
遺言書に「すべての財産はTさんに相続させる」と書いておくだけでなく、なぜそのような思いがあるのか、その理由も記載していれば、お母様の意思も尊重される結果になっていたかもしれません。
遺産分割の話し合いが長引くと、家族が負う精神的な負担だけでなく、経済的な負担も増加します。特に、裁判手続きとなると、弁護士費用が必要になってきます。
Kさんの場合、お父様の遺産をどう分けるかをめぐって、3人の兄弟で話し合いがつかず、裁判手続きまでには発展しませんでしたが、何度も弁護士を交えた会議や交渉を行い、約1年ほどその状態が続きました。兄弟間で感情的になったりと精神的にもまいりましたし、当初の兄弟の希望どおりの分け方をしておいた方がよかったと思うほどの費用がかかってしまいました。
仮にお父さまの遺言書があれば、このような協議自体をする必要もありませんので、兄弟間の感情的な対立を避けれたかもしれませんし、予想以上にかかった時間とコストを削減できたかもしれません。
まとめ
遺言書は、相続における家族間の争いや負担を避け、故人の思いを形にするための大切な手段です。遺言書を作成しないと、法定相続分に従った分割につながり、故人の希望が反映されず、遺産分割協議が長期化する可能性もあります。その結果、家族間の感情的な対立が発生したり、経済的な負担が増えることも避けられません。遺言書を準備することで、こうしたリスクを未然に防ぎ、家族や大切な人に安心を届けることができます。今こそ、自分の思いを記した遺言書の作成を考えてみましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
初回無料相談ご予約
通常60分3,000円の相談料が、初回限定!60分無料でご相談いただけます。
お電話または、公式LINEより、お気軽にご連絡ください。